刑事弁護Q&A

■Q1
警察から事件について聞きたいことがあるので警察署に来てほしいといわれています。
事件の容疑者になっているらしい。どう対応したらよいでしょうか?

■A1
出頭して取り調べに応じるか否かは任意です。
しかし、容疑者になっている場合、出頭しないと、逃亡や証拠隠滅の恐れがあるとして逮捕される可能性があります。
容疑者になっているのであれば、出頭はした方が良いでしょう。
出頭した時の対応方法は事案により様々ですので、事前に弁護士にご相談されることをお勧めします。

■Q2
任意で警察の事情聴取に応じた場合、弁護士に立ち会ってもらうことはできますか?

■A2
日本では取り調べへの弁護人の立ち会いを認める規定はなく、捜査機関が立ち合いを認めることは、まずありません。

■Q3
逮捕後の手続きについて、教えてください。

■A3
逮捕されると身体拘束され、留置場で寝泊まりすることになります。
身体拘束されてから48時間以内に検察庁に送る手続をされ検察官の取調を受け、その後24時間以内に裁判所に送る手続きをされ裁判官から質問を受け(勾留質問)、裁判官が勾留(こうりゅう)決定をすると10日間勾留されます。
勾留を延長された場合はさらに最大10日間、勾留されます。
通常は満期の日に、検察官が起訴するか否かの処分を決めます。

■Q4
逮捕勾留されたら家族と面会できますか?

■A4
原則として平日の日中は面会できます。
ただし、裁判所が接見禁止決定をしている場合は弁護人(及び弁護人になろうとする者)以外は面会できません。
接見禁止がなくて面会できる場合は、受付時間は警察署によって異なり、また、平日日中でも取調等で当日警察署にいない場合もありますから、御本人がいる警察署の留置管理課に電話をし、面会できるか確認してから行かれるのが良いでしょう。
面会の時には警察官が立ち会います。
なお、弁護人は立会人なしで休日夜間でも面会できます。

■Q5
接見禁止を解除してもらうことはできますか?

■A5
接見禁止決定に対しては、準抗告(起訴後は抗告)という法的な不服申立手段があります。
ただし、裁判所はなかなか認めてくれないのが実情です。
この他に、接見禁止の一部解除申請をする手段があります。
これは裁判所が自発的に接見禁止の一部解除をするように求める事実上の申入れで、親など特定の人に限った面会や手紙だけ、あるいは、新聞、一般に公刊されている書籍に限っての差入も認めてもらおうとするなどの方法です。

■Q6
逮捕前でも国選弁護人をつけることはできますか?

■A6
現在の制度では、逮捕前に国選弁護人はつきません。
国選弁護人は、法律で定まった一定の犯罪(死刑、無期、長期3年超の懲役・禁固の罪)について、勾留状が発せられた後につけられます(被疑者国選)。
私選弁護人は逮捕前でも当然つけることができます。

■Q7
少年事件の手続について、教えてください。

■A7
最初に逮捕勾留される等は成人と同じです。
成人と異なり、勾留満期の後は基本的に全件家庭裁判所に送致されます。
勾留満期の日に家裁に送られ、家裁の裁判官が観護措置決定をするか否か決めます。
例外的に嫌疑がなく不必要であると検察官が判断した場合などは、家裁に送られないこともあります。
観護措置決定がされれば、少年鑑別所に送られ、そこで寝泊まりし、家裁調査官や鑑別所技官などの調査を受けながら約4週間の間、審判を待ちます。
弁護士は、家裁送致前は弁護人、送致後は付添人となります。

■Q8
少年事件でも、弁護士は国選で頼めますか?

■A8
2014年6月18日から、少年法改正により、国選で頼める範囲が拡大しました。
家裁送致前の勾留段階では、成人と同じで、死刑、無期、長期3年超の懲役・禁固の罪については被疑者国選弁護人がつきます。
家裁送致後、従来は短期2年以上の罪についてのみ国選付添人が認められていました。
そのため家裁送致前は国選弁護人だった弁護士が、家裁送致後は国選付添人にはなれず、私選で援助制度を利用しながら付添人になることが多かったのです。
2014年の少年法改正により、被疑者国選弁護人の範囲と同じく、死刑、無期、長期3年超の懲役・禁固の罪について国選付添人がつくことになりました。
ただし、勾留されない被疑者には被疑者国選弁護人はつかないのと同じで、観護措置が取られていない在宅の少年には国選付添人はつきません。
また、要件を満たす場合も、国選付添人を選任するか否かは裁判所の裁量とされていますので、選任されない場合があります。その場合は援助制度(日本弁護士連合会刑事被疑者弁護援助制度)の利用ができます。

■Q9
逮捕、勾留された場合、起訴前に身体拘束から解放してもらう方法はありますか?

■A9
法律で定めた手段として、勾留に対する準抗告、勾留取消請求、勾留の執行停止申立等の手段があります。
その他、公開の法廷で裁判官に勾留の理由を説明するよう請求できます。
事実上の手段として、送検時に検察官に勾留請求しないように申し入れる方法、勾留質問時に裁判所に勾留決定しないように申し入れる方法があります。

■Q10
勾留決定に対する準抗告とその後の手続を教えてください。

■A10
準抗告申立書の提出先は、当該審級の刑事事件係です。
準抗告に対する決定書は弁護人と被疑者両方に送達されます。
準抗告棄却決定に対しては、決定書が送達された日から5日以内(被疑者に先に送達されたら被疑者に送達された日から。当日は不算入。)に特別抗告ができます。最高裁を宛先とした特別抗告申立書を、準抗告棄却決定をした地裁に提出します。
勾留に対する準抗告は、1つの勾留に対して1回可能。すなわち、1回目の勾留に対して1回、延長後の勾留に対してもう1回できます。

■Q11
勾留に対する準抗告をすれば釈放されますか?

■A11
準抗告をしても裁判所はなかなか認めないことが多く、難しいというのが実態ですが、認められる場合もあります。

■Q12
逮捕勾留中の生活について、教えてください。

■A12
警察の留置場に寝泊まりします。警察官や検察官の取り調べも受けます。
起訴後は取り調べに応じる必要はありません。

■Q13
取り調べに際して注意すべきこと(最重要事項)を教えてください。

■A13
自分の記憶と異なる内容の調書には署名しないことが基本です(署名押印のない調書は証拠になりません)。
その上で、黙秘した方が良い場合、供述して署名した方が良い場合、供述しても調書には署名しない方が良い場合、など、対応方法は事案ごとに異なります。
最重要事項なので、直接、弁護人とよく相談する必要があります。

■Q14
調書に署名しないということは法的に許されるのですか

■A14
許されます。
供述内容と異なる調書の場合はもちろん、供述どおり記載した調書であっても、署名押印を拒否できます。
刑事訴訟法198条5項は、(捜査官は)調書に誤りがないならば署名押印を求めることができるが、拒絶されたらこの限りでない、と明記しています。

■Q15
逮捕勾留された場合、裁判にならずに罰金を払うだけで出られることもあると聞きましたが、そのようなこともあるのでしょうか?

■A15
あります。
これは、略式手続という制度で、公開の裁判を行わずに、罰金刑の言い渡しを受けてすぐに釈放されるものです。
公開の裁判を受けることは被疑者の権利ですので、略式手続をするには被疑者に異議がないことが必要ですし、罰金言い渡しを受けた後不満であれば告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求ができます。
公開の裁判を受ける権利を放棄することになりますが、早期に釈放されるので実際には被疑者に有利に機能することも多いといえます。
罰金刑の規定がない罪(例えば詐欺、恐喝、など)では、当然、略式手続は行われません。

■Q16
罰金を払えないとどうなりますか?

■A16
罰金を完納できない場合は、労役場留置となり、身体拘束されます。

■Q17
略式手続で罰金の言い渡しを受けたら、当日に支払いをしないといきなり労役場留置になりますか?

■A17
罰金の言い渡しを受けた日に払えなくても、直ちにその日のうちに労役場留置にはなりません。
略式手続で罰金の言い渡しを受けても、その裁判が確定するまでに14日間かかりますし、刑法上(18条5項)、罰金刑の確定から30日以内は労役場留置の執行はできない、とされています(本人の承諾があれば執行可能です)。
なお、罰金刑の言い渡しの後、その確定前であっても、刑事訴訟法348条により、罰金の仮納付を命じられることはありますが、この場合でも、支払えないからといって労役場留置とすることはできません。確定後30日を経過した後は、払わないと労役場留置になりえますが、通常は検察官から連絡があった後に執行されることが多いようです。

■Q18
地方裁判所で、平成26年12月1日に、懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受け、そのまま控訴せず、確定しました。執行猶予期間が満了するのはいつでしょうか。

■A18
あなたの場合は、判決により、裁判確定の日から3年で執行猶予期間は終了します。
裁判言い渡しの日の翌日(平成26年12月2日)を1日目と数えて14日目(同年12月15日)が控訴期限になります。この日が過ぎれば刑が確定し、控訴期限の翌日(同年12月16日)から執行猶予期間が算定され、この日(12月16日)が執行猶予期間算定の1日目です。
その後の執行猶予期間は、月、年と暦単位で算定しますので、あなたの場合、執行猶予期間の最終日は、暦上の3年後である平成29年12月15日となります。
この間、平成28年はうるう年で1年が366日ありますが、日数ではなく暦単位なので、執行猶予期間の満了日は、単純に平成26年12月16日から3年後の平成29年12月15日となります。
したがって、執行猶予期間中に、うるう年を含まない場合に比べて、執行猶予期間満了までの実日数が1日多くなります。

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